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土木遺産⑮ 石積みとともに紡ぐ水辺の暮らし

土木遺産⑮ 石積みとともに紡ぐ水辺の暮らし

2021.6.16

中ノ川の河口近くの石積み、中央の巨木は入港する舟の目印として植えられた

  江戸時代の一時期、今の高島市に甲府藩の飛び地があった。マキノ町海津もそのひとつだ。1701(元禄14)年から1705(宝永2)年の間 甲府藩領高島郡の代官を務めた西 与一左衛門は、琵琶湖の風波で家屋が被害を受けて困る村人を見て、連続した石垣を築くことを決意し、幕府から銀35貫を得て完成させた。彼の尽力への感謝は今も受け継がれており、湖岸に近い蓮光寺に碑を建立し毎年3月15日に法要が営まれる。

 

 江戸時代の海津は丸子舟の拠点として栄えたが、明治時代の鉄道の発達によって水運は衰退。海津の市街は往時とは比べ物にならない静かなたたずまいを見せる。その家々の間を抜ける「辻子(ずし)」と呼ばれる通路から石積みの開口部を通って湖岸に出ると、湖畔には約1.2kmにわたって高さ2.5mほどの石積みが残る。石積みは何度も被災して修復された歴史を持ち、個所によって石の加工度1)や積み方が異なっている。

 

 湖岸では、伝統的漁法である「魞(えり)2」」や湖水を利用するための「橋板」など、水に寄り添う生活が営まれる。人と水の共存により作り出される穏やかな景観は、「高島市海津・西浜・知内の水辺景観」として、重要文化的景観3)に選定(2008(平成20)年)された。

図-1箇所により石の加工度や積み方が異なる
図-2 湖水で洗い物などをする橋板
図-3 蓮光寺にある西代官の顕彰碑

1) 石垣を構成する石の加工度は次のように分類するのが一般的である。
 野面(のづら)積み・・・自然のままの石または粗削りした石をそのまま積む方法。石と石の隙間が大きくなるのは避けられない。

 打込み接(はぎ)・・・接合面を大きくするため平面が出るように 石を打ち割って積む方法。どうしてもできてしまう隙間に間石(あいいし)を詰める場合もある。

 切込み接・・・打込み接よりもさらに石を加工し、隙間なく積み上げる方法。

2) 矢印のような形に竿と簾を建て並べ、  魚の習性を利用して「つぼ」と呼ばれる部分に魚を集める漁法。 琵琶湖一円で見られる。アユ、モロコ、ワカサギなどが獲れる。
3) 2004(平成16)年の文化財保護法の改正により、「地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地」(法第2条第1項第5号)を文化的景観とすることになった。そのうち、景観法に規定される景観計画区域又は景観地区内にあって特に重要なものを、都道府県又は市町村の申出に基づき重要文化的景観に選定する。

 

筆者:坂下 泰幸

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